「なんとなく年収が低い気がする」は危険なサイン
転職を考えるきっかけのひとつとして、「同世代と比べて年収が低いような気がする」という漠然とした不安を抱えている方は少なくありません。しかし、「気がする」という感覚だけでは、自分が本当に不当に低い年収をもらっているのか、それとも現状が市場相場に見合っているのかを判断できません。
感覚に頼ったまま転職活動を始めてしまうと、「とにかく今より高ければいい」という基準になりがちです。その結果、自分の適正年収より低い条件のオファーでも「上がった」と感じて受け入れてしまったり、逆に相場感を間違えて高すぎる条件を要求し、採用されなかったりするケースが起こります。
「なんとなく低い気がする」という感覚を、客観的なデータで裏付けることが、転職活動の正しい出発点です。この記事では、20代後半が自分の市場価値に見合った適正年収を調べるための手順と、その結果をどう転職判断に活かすかを解説していきます。
20代後半の年収事情と市場の実態
20代後半の平均年収はどのくらいか
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、25〜29歳の平均年収は約350〜380万円程度とされています(正規雇用・全業種平均)。ただし、この数値は業種・職種・企業規模・地域によって大きく幅があります。ITエンジニアや金融系の専門職であれば同年代で500万円以上も珍しくない一方、サービス業や小売業では300万円を下回ることもあります。
重要なのは、単純な年齢ベースの平均値と自分を比較するのではなく、「同じ業界・職種・スキルレベルの人と比較したときの自分の位置」を把握することです。あなたが営業職であれば営業職の相場を、エンジニアであればエンジニアの相場を、それぞれの文脈で確認することに意味があります。
20代後半は市場価値が急速に変わる時期
20代後半は、社会人としての基礎が固まり、専門性が形成されていく重要な時期です。この時期に何を経験し、どんなスキルを身につけるかによって、30代以降の年収の伸びが大きく変わります。
転職市場においても、20代後半は「ポテンシャル採用」から「即戦力採用」へ切り替わるタイミングです。28〜29歳を過ぎると、採用企業側は経験・スキル・成果をより厳しく見るようになります。だからこそ、今の自分の市場価値を正確に把握し、どのタイミングでどう動くかを計画することが非常に重要なのです。
市場価値と年収のズレが生まれる3つの原因
原因1:在籍年数によるテーブル固定
多くの企業では、年次や評価に基づいた給与テーブルが存在します。特に中堅・大企業では、個人の市場価値よりも「社内の等級」や「在籍年数」によって給与が決まることが多く、実力があっても社内テーブルの天井を超えることが難しい構造になっています。
この場合、外から見た市場価値と、社内で払われている年収の間にギャップが生まれます。「なぜ昇給が少ないのか」と疑問を持ちながらも理由がわからないという人は、この構造的なズレが原因の可能性があります。転職市場に出てみると、自分の市場価値が想像以上に高いと気づくことも多いです。
原因2:スキルが社外に見えにくい状態になっている
業務の中でさまざまなスキルを身につけていても、それが外部に見える形で整理されていないと、採用担当者には伝わりません。たとえば、社内システムの改善を主導した経験があっても、それを「プロジェクトマネジメント経験」として言語化していなければ、スキルとして評価されません。
市場価値が正当に評価されるためには、自分の経験やスキルを「外部の人が理解できる形」に変換する作業が必要です。これが職務経歴書や自己PRの本質的な役割です。スキルの言語化ができていないと、市場での評価が実際の実力を下回る可能性があります。
原因3:業界・職種の需要変動を把握できていない
転職市場における年収相場は、業界や職種の需給バランスによって変動します。たとえば、DX推進の流れを受けてITエンジニアの需要が急拡大したり、特定の業種が不況により採用が冷え込んだりします。数年前の相場感を今に当てはめても正確ではありません。
特に20代後半は、入社した頃とは転職市場の状況が変わっていることが多い時期です。定期的に市場の動向をチェックし、自分のスキルの需要がどう変わっているかを把握することが、適正年収を正確に知るためには欠かせません。
20代後半が適正年収を調べる具体的な手順
ステップ1:現在の自分のスキル・経験を棚卸しする
まず最初に行うべきことは、自分のスキルと経験の棚卸しです。これまでの職歴を振り返り、担当してきた業務・役割・実績を具体的に書き出してみましょう。できれば数字を使って表現することが重要です。「売上を伸ばした」より「前年比115%の売上を達成した」、「チームをまとめた」より「5名のチームのリーダーとして月次目標を3ヶ月連続達成した」という形です。
この棚卸し作業が、その後の年収調査において「自分はどのレベルのスキルを持つ人材か」を判断するための基準になります。棚卸しが中途半端だと、調査した相場と自分をうまく照らし合わせることができません。
ステップ2:同職種・同業界の求人から年収レンジを把握する
スキルの棚卸しができたら、転職サイトで同じ職種・業界の求人を複数確認してみましょう。求人票に記載されている年収レンジと、求められているスキル・経験年数を比較することで、「自分と近い条件の人に、市場はどの程度の年収を提示しているか」が見えてきます。
この作業は転職の意思決定とは切り離して行えます。求人をチェックするだけなら、転職意思のない状態でも気軽に行えます。登録して求人情報を見るだけでも、市場の動向を把握するための重要な情報が得られます。
ステップ3:AI年収診断ツールで個別に診断する
求人票のリサーチに加えて、AI年収診断ツールを活用することで、自分の情報をもとにした個別の診断結果を得ることができます。転職エージェントが開発したAIによる診断は、実際の転職市場データと紐づいており、業種・職種・スキル・経験年数などを入力するだけで適正年収の目安を算出してくれます。
求人票から相場をざっくりつかんだ上で、AI診断を使って「自分自身の条件でどのくらいの年収になるか」を個別に確認するという組み合わせが、最も精度の高い把握方法です。
ステップ4:転職エージェントにヒアリングする
AI診断や求人リサーチで得た情報を持って、転職エージェントのキャリア面談を受けることで、さらに詳しい情報を得られます。エージェントのアドバイザーは「今の市場でこのスキル・経験を持つ人材に、実際に何社がどのくらいの条件でオファーを出しているか」というリアルな情報を持っています。
転職エージェントへの登録・相談は無料で行えます。転職を決意していなくても「情報収集のため」として面談を申し込むことは普通に行われており、断られることはありません。まずは話を聞いてみるという姿勢で相談してみると、意外なほど有益な情報が得られることがあります。
市場価値を正確に把握するための3つのポイント
ポイント1:「業界内」での比較にこだわる
年収の市場価値を調べる際、全業種平均のデータと比較しても意味のある判断はできません。自分が属している業界・職種の中での相場を確認することが、実態に即した市場価値の把握につながります。たとえば、メーカー勤務の営業職であれば「メーカー×営業職」の年収相場を調べることが基本です。異業種の平均値と比較して「低い」「高い」と判断しても、転職活動の判断材料としては意味がありません。
同様に、企業規模も重要な比較軸です。大企業・中小企業・ベンチャー企業では年収水準が異なることが多く、同じ職種でも規模によって大きな差が生まれます。自分と同程度の規模の企業を調査対象にすることで、より現実的な比較が可能になります。
ポイント2:スキルではなく「成果・実績」で自分を評価する
市場価値を考えるとき、「どんなスキルを持っているか」よりも「そのスキルを使って何を達成したか」の方が転職市場では重視されます。営業スキルを持っていることより、そのスキルで具体的にどれだけの売上を達成したか、どれだけの顧客を獲得したかの方が、採用担当者には伝わりやすいのです。
市場価値の自己評価を行う際は、「実績ベース」で考える習慣をつけることが大切です。自分のスキルを「使った場面と成果」とセットで整理することで、転職市場での自分の評価額がより正確にイメージできるようになります。
ポイント3:直近1〜2年の経験に注目する
転職市場では、古い経験より直近の経験が重視されます。5年前に担当した業務よりも、この1〜2年で取り組んだ業務の方が市場での評価に直結しやすいです。特に直近の実績や、最近身につけたスキルが市場でどのくらい需要があるかを把握することが、現在の市場価値を正確に知る近道です。
もし直近1〜2年で特に目立った実績がない場合は、今後の転職を見据えてスキルアップの機会を積極的に作ることも検討してみましょう。市場価値は現在地の確認だけでなく、どう高めるかを考えるための指標としても活用できます。
診断結果を踏まえた転職判断の考え方
適正年収が現在より高かった場合:転職で年収アップを狙う根拠になる
AI診断や市場調査の結果、自分の適正年収が現在の年収より明らかに高い場合は、転職によって年収アップを実現できる可能性が高いといえます。現在の職場での評価が市場に追いついていない状態なので、外に出ることで正当な評価を受けられる確率が上がります。
この場合、焦って転職活動を始めるより、まずは職務経歴書の整備と自己PR磨きを優先することをおすすめします。市場価値があっても、それを伝える力がなければ内定には結びつきません。準備を整えた上で転職活動を始めることが、年収アップ転職の成功率を高めます。
適正年収が現在と同水準だった場合:年収以外の条件を見直す
診断の結果、現在の年収が市場相場とほぼ同水準だった場合、年収アップを転職の主な目的にするのは現実的でない可能性があります。ただし、これは転職しなくてよい理由にはなりません。年収以外の面、たとえば仕事内容・職場環境・キャリアパス・福利厚生・働き方の柔軟性などに不満がある場合は、年収条件を維持しながらそうした条件を改善できる転職先を探すことは十分に意義があります。
適正年収が現在より低かった場合:現職でのスキルアップを優先する
市場の適正年収が現在の年収より低い場合、今の職場が特別に高い評価をしてくれていることを意味します。このケースでは、慌てて転職するより、現職でさらにスキルを積んで市場価値を高めてから転職を検討した方が有利です。あるいは、特殊なスキル・資格を取得して市場での希少性を高める戦略も有効です。
適正年収チェックを定期的に行う習慣を持とう
市場価値の把握は一度きりで終わるものではありません。転職市場は常に変動しており、半年〜1年で相場が変わることも珍しくありません。定期的にチェックを行うことで、自分の市場価値がどう変化しているかをリアルタイムで把握できます。
適正年収の調査は、転職を決意したときだけに行うものではありません。少なくとも年に一度は自分の市場価値を確認する習慣をつけることをおすすめします。転職市場の状況は変化しますし、自分のスキルや経験も積み重なっていきます。定期的にチェックすることで、「いつ転職すれば最も有利か」というタイミングも見えてきます。
手軽に試せるAI年収診断ツールは、こうした定期的な市場価値チェックにも最適です。複雑な手続きなしにすぐ診断できるため、ちょっとした空き時間に活用できます。
自分の年収が市場と合っているかどうか、まずは一度確認してみてください。その結果が、次のキャリアを考えるための重要なヒントになるはずです。





